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12/05/2017

定型約款に関する国会での法務省答弁について(1)

民法(債権法)改正について、どの点が気になるか法務関係者に聞くと、新しく民法に加わった定型約款の規律を挙げる人が非常に多い。ただし、定型約款の条項は、改正審議の最初から改正の目玉とされていたがゆえに、関係者間の意見集約には大変な手間がかかり、審議過程の最終段階になって、重要な概念や規定ぶりが大きく変わっていった、という点が、他の論点と多く異なる。そのため、最終的に民法の規定となった文言について、どういう規律なのか、どのような論点があるのか、という点について、きちんと書かれた文献はほとんど存在しないという印象を受ける。(現時点における良質な文献としては、学者の立場から、審議過程を丁寧に追ったものとして、森田修、「約款規制:制度の基本構造を中心に」、法教432号92頁、433号88頁、434号85頁、435号88頁が、金融実務を念頭に置いて叙述として、浅田隆、「定型約款 銀行取引を念頭に」金融法務事情2050号28頁、2055号43頁がある。)
立案担当者による事実上の公定解説であるいわゆる「一問一答」の出版を待てば最終案についてのまとまった説明が出てくる(一応現時点においてそれらしきものとして、松尾博憲、『Q&A民法改正の要点』があるが、描写がややざっくりしている。)のであるが、なかなか出ないので、とりあえずの縁として、国会審議における法務省関係者の答弁内容を整理してみた。

以下、答弁内容の口語調を、適宜書き言葉に直してみた。各発言の後ろについている記号の判例であるが、Rが衆議院法務委員会、Sが参議院法務委員会で、たとえばS193:12:24小川とあるのは、第193回国会参議院法務委員会会議録12号14頁における小川民事局長の発言となる。審議過程を通して、小川民事局長が最も多く答弁を行っていたが、金田法務大臣、盛山法務副大臣も発言をしている。

1.約款に関する規定を設けた趣旨

民法の原則によれば、契約の当事者は契約の内容を認識して意思表示をしなければ契約に拘束されないと解されているが、約款を用いた取引をする多くの顧客は、そこに記載された個別の条項を認識さえしていないため、なぜ約款の中の個別の条項に当事者が拘束されるのかといった点も必ずしも明らかではない。また、約款を利用して継続的な契約が締結される場合などには、契約の内容を約款準備者が一方的に変更することが現実に行われているが、これも契約の相手方の同意なく可能であるかは不明瞭である。以上の問題状況を踏まえて、改正法案においては、約款を用いた取引の法的安定性を確保するため、民法に定型約款に関する規定を設けることとしている。これによって、定型約款の中の個別の条項の拘束力の有無や定型約款の変更の可否に関する紛争など、定型約款に関連する紛争について適切な解決の枠組みが示され、紛争の未然防止にも役立つことが期待されるところである。 [S193:12:24小川]

(この項続く) 

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