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12/06/2017

改正民法の施行まであと2年半を切った今、法務パーソンは何をなすべきか

のっけから大上段のタイトルで恐縮です。

報道によれば、施行日は20年4月1日で内定したとのことです。施行まで実質2年半もないわけです。定型約款についての記事が続いていますが、予定を変更し、急遽こちらのテーマを書いてみます。

本屋の法律書コーナーに行くと民法改正の本が横積みになっていますが、どれを見たらいいかわからないという人も多いと思います。ただし、審議当初の雰囲気と異なり、今回の改正は、民法の基本原則自体を修正した、というものではなく、あくまでも部分的改正に留まり、実質的変更部分はそれほど多くありません。その意味で、企業法務戦士さんがいうように、“多くの改正ポイントがこれまでの判例・通説を明文化したものに過ぎないこと、またルールが変わった項目についてもその多くは「任意規定」であり、契約で上書きすれば、これまで通りの取引慣行を維持することは可能”のはずです。

ところが、最近出ている民法改正の本には、契約文言改正に言及しているものも少なくありません。これには、積年の自説をこの機会に認めさせたい学者や、紛争を増大させ飯の種を増やしたい一部弁護士の暗い動機が隠されていると見るべきでしょう。取引実務の観点からは、明確に改正された箇所を除き、できる限り従来の実務から変更をせず、運用の安定性を維持することが必要であると考えます。
とりわけ、経過規定によれば、原則として、改正法は、施行日以降に成立した契約にのみ適用され、施行日前に成立した契約には引き続き旧法が適用されますから、旧法での契約は、今後も長期間存続することになります。修正部分をできるだけ少なくするとともに、相互の矛盾をできる限り少なくして、運用の混乱を防ぐことが必要です。

そこで、冒頭に述べた法務としての対応となりますが、施行まで約2年と半年の間、おおむね今年度中、遅くとも来年の前半までに、業務における対応すべき論点を抽出し、続く1年程度で対応方針を策定する必要があると思います。この中には契約文言の改正や、回収など各種事務手続きの改正というようなことが含まれています。そして、最後の1年間で、改正方針の周知を図るということで、社内研修や必要に応じて顧客説明などを行うというようなスケジュールで進めていくことが、概ね想定されます。

それでは、今回の改正によって、どのような対応が必要かという点について考えていきましょう。
まず、従来のルールが改正されたり、新たなルールができたりした領域というものがあります。この中で、強行法規の改正であれば、それに必ず何らかの対応が必要になります。
しかし、このような強行法規の改正はそれほど数としては多くはありません。また、その中でも、例えば時効とか法定利息などは、取引の日常ではあまり意識することはなく、事前の準備という点から見れば優先度は少し落ちるということになります。そうすると、保証についての規律の改正など、限定された論点になるのではないかと思っております。
次に、ルール改正や新設があった領域でも、任意法規の部分とか、従来から確率していた判例法理を明文で条文化したという部分があります。こちらについては、従来通りの実務を続けていっても直ちに問題にはなりません。従来締結していた特約はそのままにしておけばよろしいでしょうし、法律にデフォルトルールができたからといって、あえて特約を廃止して民法に合わせるという必要も必ずしもないと思います。
先ほど書いた通り、経過規定で、旧法による契約というのがかなりの長期間存続するというのが予測されます。あまり旧法下と新法下とで異なる扱いをするのは、実務上管理コストが膨らみ、かえってトラブルを引き起こしかねません。どうしても変えなければならないもの以外は変えない、というのが実務の基本的スタンスではないかと思われます。
ただ、任意法規の部分を特約で排除した場合、留意しなければならないのが、「任意規定の指導形象機能」になります。「任意規定の指導形象機能」とは、学説上いろいろな意味があるようですが、例えば、「任意規定というのは長年,積み重ねられた公平の内容を示しているので,そこから外れると公平ではないという推定が働く」というような考えがあります。今後の議論の中で、従来通りの特約を規定していたら、それは民法の原則とは違うということで、特に消費者契約法10条との関係でどうなのか、といった論点が出てくるということがあり得ます。
改正点であっても、従来の確定判例や異論のない学説が条文化された部分は、基本的には従来の実務を継続すればいいということになります。ただし、条文化は果たして従来の実務と全く齟齬がないのか、という点については、検討しておく必要があります。
暴利行為とか事情変更の原則など審議過程において議論となったが、結局コンセンサスが得られず明文化が見送られ解釈にゆだねられた領域をどう考えるのか、という問題もあります。条文化されなかったのですから、基本的には従来通りでいいのでしょうけど、議論した、という事実が残りますので、一部の学者や弁護士が積年の自説を展開したり、紛争を起こして飯のタネにしたりする、ということも考えられなくもありません。実務サイドとしては、粛々と安定した実務を積み重ねていくというほかはないのだろうな、と思います。

まずは自社の行なっている業務で、改正点のうち、自社業務に当てはまる論点は何か、その論点は強行規定なのか任意規定なのかその他の論点に当てはまるのかをカテゴリー分けをしていくところから改正法対応が始まるのではないかと思います。

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