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12/07/2017

定型約款に関する国会での法務省答弁について(3)

3.組み入れ
約款は、定型約款に限らず契約の一類型である、というのが、改正審議に加わった者たちの共通認識であった。前回紹介した1についての答弁はまさに約款が契約であることを前提に、契約としての拘束力を認めるための特例として改正法の規律を定めたという趣旨である。
あらためて改正法548条の2第1項を引用する。

 

(定型約款の合意)
第五百四十八条の二 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。

 一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。

 二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

以下、定型約款が契約としての法的拘束力を得ることを「組み入れ」と言い、組入れについての答弁を見ていくことにする。

契約当事者が約款の条項に拘束される根拠については、大審院の大正四年という古い判例は、火災保険約款中の免責条項の効力が争われた事案の中で、当事者双方が特に保険約款によらない旨の意思表示をせずに契約したときは、その約款による意思で契約したものと推定すべきであるとしている。このような判例の立場を一般に意思推定説と呼んでいる。 この判例は、約款による契約の成立要件について、約款の内容を認識していなくとも、特定の約款によることの合意があれば原則として契約の内容となるとしたものと解されており、約款を利用した取引の安定を図るという観点からは、この判例の考え方を基本的には踏襲することが妥当であると考えられる。 意思推定説をとるとする判例の理解については必ずしも一様ではないものの、個別の条項について合意をしたものと推定するにとどまるという考え方であると理解し、改正法案においては、こういった推定によるという考え方を採用すると、以下に申し上げるような問題がある。 まず、定型約款の規定を設けるというのは、定型約款中の条項の内容を認識していないにもかかわらず当事者がこれに拘束される根拠を与えるためのものである。そのため、合意があったことを推定する旨の規定を設けたとしても、定型約款については、当事者がその内容を認識していないということが通常であるということを前提とすると、前述のとおり推定というのは覆される可能性があるので、常に推定が覆されるということにもなりかねず、取引の安定を確保することができないと考えられる。その意味では、みなすという形にせずに推定によるとする方法では、制度として設ける場合の対応としては不十分である。 また、合意があったことを推定する構成となると、推定が覆らない限りは当事者間には真に合意があったことを前提とするということになる。しかし、改正法案での不当条項の排除のルールは、そもそも個別の各条項についてまでは具体的な合意が存在しないという実態にあることを前提として設けたものであるので、合意の推定という構成によると、このルールの創設も理論的には困難になりかねず、要するに、合意があったということを前提として、例えば公序良俗のような形でその効力を無効とするというような説明をせざるを得なくなり、少なくとも不当条項の説明の仕方としては大分変わってくるということが言える。そういった点も考慮すると、相手方保護の問題にも及ぶ。 以上のとおり、定型約款中の条項について合意をしたものとみなすこととした改正法案の内容は、取引の安定の確保と、取引の相手方の保護の要請の双方に配慮した合理的なものであるのに対し、合意をしたものと推定する旨の構成には、取引の安定確保という観点、それから相手方保護の点から見ても問題があるのではないかと考えられる。[R192:16:13-14小川]
「定型約款準備者…があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示」というのは、取引を実際に行おうとする際に顧客である相手方に対して個別に面前で示されていなければならず、定型約款準備者のホームページなどで一般的にその旨を公表していることだけでは表示とは言えない。また、ここに言う表示は、相手方がみずから契約内容の詳細を確認したいと考える場合には、その表示を踏まえて定型約款準備者に内容の開示を請求し、その内容を確認した上で、不満な点があれば契約を締結しないことが可能となるようなものでなければならない。[R192:13:18-19小川] [S193:12:24-25小川]
[S193:13:31小川]
548条の2第1項2号は約款そのものの表示まで求めているわけではなく、定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示する規定になっているので、その内容についての具体的な表示が必要である。[R192:13:19小川]
「その内容」は、「契約の内容」ではなく「契約の内容とする旨」か?
表示の方法は問わない。[R192:13:19小川]
表示が方式は問わないものの、現実に表示したことを厳格に求める、という点で実務対応にも影響を与える度合いが大きいのではないかと思われる。 (この項続く)

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