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12/08/2017

定型約款に関する国会での法務省答弁について(4)

4.不当条項規制
組入れの例外として、定型約款の内容が合意とみなされない場合がある。改正法548条の2第2項は次のように規定する。

2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

以下、同項を巡る答弁を見ていく。

「定型取引の態様」、「定型取引の実情」、「取引上の社会通念」は、どれも考慮要素として考慮するということである。[R192:13:10小川]
定型取引においては、契約内容の画一性が高い取引であるため、相手方である顧客において、約款の具体的な内容を認識しようとまではしないのが通常である。このような特質に鑑みると、相手方にとって客観的に見て予測しがたい条項が置かれている場合において、その条項が相手方に多大な負担を課すものであるときには、相手方においてその内容を知り得る措置を定型約款の準備者が講じておかない限り、そのような条項は不意打ち的なものとして信義則に反することとなる蓋然性が高いと考えられる。こういった定型取引の特質を考慮するということを示したのが「定型取引の態様」である。いわば定型取引の一般的な特質を踏まえた考慮要素である。[R192:11:15小川] [R192:12:11-12小川] [S193:12:22小川]
これに加えて、個別の取引の実情を具体的に考慮し、問題とされた条項が信義則に反するかどうかを検討することも必要となる。具体的には、その取引がどのような経済活動に関して行われるものか、その取引においてその条項が設けられた理由や背景、その取引においてその条項がその当事者にとってどのような利害得失を有するものかなどといった点も広く考慮されるべきものと考えられる。この趣旨で、個別の取引の実情という意味で、「定型取引の実情」と言っている。[R192:12:11-12小川]
また、当事者間の公平を図る観点からは、条項が信義則に反するか否かに当たっては、その種の取引において一般的に共有されている常識、すなわち取引通念に照らして判断することも必要になると考えられる。このことをあらわす趣旨として、「取引上の社会通念」を考慮事由として示したものである。[R192:12:11-12小川]
第548条の2第2項は、いわゆる不当条項と不意打ち条項のいずれも含む。不意打ち条項は、「定型取引の態様」という文言を入れたという点から見ても、改正法第548条の2第2項の規定によって排除され得る。[R192:11:15小川] [R192:15:11小川、金田]
548条の2第2項「相手方の義務を加重する」という規定は、消費者契約法との比較もあるが、何を基準に判断するのかという点は、任意規定、判例、一般的に存在する法理と言われるものを基準とする。[R192:15:20小川]
「相手方」は、個別の、個々の相手方という意味である。[R192:15:20小川]

改正法548条2第2項の規定は、消費者契約法第10条の規律と類似しているので、その差異が問題となる。以下はそれに対する答弁である。

改正法案においては、定型約款の個別の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては合意をしなかったものとみなすこととしている(改正法案548条の2第2項)。この規定を設けた趣旨は、顧客である相手方が約款の個別の条項の内容を具体的に認識しないまま取引が行われるために、合意をしたものとみなすことが適切ではない条項が契約の内容に含まれるといったことを防止することにあり、相手方の保護に資するものである。 他方で、消費者と事業者との間の契約である消費者契約に適用される消費者契約法第10条は、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効としている。 このように、548条の2の第2項と消費者契約法第10条とはいずれも契約の当事者の一方にとって不当な内容の契約条項の効力を認めないということとするものであり、かつ、その要件も類似しているように見えるが、以下の相違点がある。 まず、定型約款に関する規定は消費者と事業者との間の消費者契約に適用対象を限定していないので、例えば企業がワープロソフトなどを購入する契約を締結した場合のように、事業者間の取引であっても改正法案の第548条の2は適用され得る。 また、その要件の中でも最も主要な部分である信義則違反の有無の判断についても、改正法案においては顧客である相手方が約款の個別の条項の内容を認識しないまま取引が行われるという定型取引の特質が重視されることになるのに対して、消費者契約法第10条においては、消費者と事業者との間に様々な格差があることを踏まえて判断される。 このように、改正法案の548条の2第2項と消費者契約法第10条とは、適用範囲を異にするのみならず、その判断においても重視すべき考慮要素も異なり、導かれる結論に違いが生ずることもあり得る。[S193:12:26小川] [S193:13:34小川]
主張を選択的にできるのかという点であるが、改正法案第548条の2第2項のみなし合意除外規定と消費者契約法第10条の両方の要件に該当する際には、これは選択的に主張することは可能である。すなわち、改正法案第548条の2第2項は、ある条項についての合意の有無を定めるものであるのに対し、消費者契約法第10条は、ある条項について合意が成立していることを前提とした上で当該条項の有効性を判断するものであるが、改正法案第548条の2第2項による合意の有無の判断を先行して判断しなければならないという関係にはなく、当該条項の拘束力を争う当事者はこれは選択的に主張することが可能であって、裁判所も同様に改正法案第548条の2第2項について先行して判断しなければならないというわけではないというふうに考えている。[S193:13:34小川]
不当条項の判断というのは、非常に厳格なものとして公序良俗に相当するような場合でなければ駄目かというと、それよりは、もちろん定型約款という性質から見て、不意打ち条項的なものも含め、条項の中身に加えて、態様なども含めて幅広く考慮されるものだというふうに理解しているので、いわゆる民法上の一般条項が発動される場面でなければならないということではない。[S193:14:11小川]
暴利行為の基となる公序良俗違反と比較すると、ある条項について公序良俗に違反しているかどうかという点は、専ら合意された条項の内容の不当性に着目して判断されることになると思うが、定型約款の個別の条項の効力の有無は、内容面の不当性のみに着目するのではなく、相手方がその条項の存在を明確に認識可能なものであったかなどの様々な事情を加味して判断するのが相当であると考えられる。したがって、公序良俗の違反の判断よりも、先ほどの御質問であれば、緩いということは言えようかと思う。[S193:14:11小川]
普通の契約であれば一対一の関係で一定の合意に基づいて契約が作成されるということだと思うが、これはまさに定型約款の特殊性があるので、そういう意味では、様々な事情、とりわけ合意を形成がしにくいものであるという特殊性なども考慮した上で判断されることだと思う。[S193:14:12小川]

このあたりは抽象的な議論であって、具体的にどのようになるのかは、今後の事例の蓄積が必要ではないかと思われる。
(この項続く)

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