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12/10/2017

定型約款について国会での法務省答弁について(6・終)

6.定型約款の変更
改正法の民法の規律は、一言で言ってしまえば、「当事者の合意がなくても契約として成立し拘束力を認める。当事者の合意がなくても契約の変更としての効力を認める。」といったものであるが、このうち定型約款の変更については、他国での立法例はないようだ。この規定は、約款の規律を民法に規定するためのいわば「アメ」として産業界の一部の要望に応えるかたちで導入されたが、諸外国の事例もなく、学者からの評判もよろしくないため、今後の解釈論では、かなり論点が出てくるように思われる。

 (定型約款の変更) 第五百四十八条の四 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。

 一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。

 二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。

3 第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。

4 第五百四十八条の二第二項の規定は、第一項の規定による定型約款の変更については、適用しない。

以下、答弁を紹介する。

定型約款による契約には、契約関係が一定の期間にわたって継続するものも多く、定型約款には極めて詳細かつ多数の条項が定められているのが実情であるため、法令の変更や経済情勢、経営状況に変動があったときなどに、それに対応して定型約款を変更する必要が生ずることが少なくない。民法の原則によれば、契約の内容を事後的に変更するには個別に相手方の承諾を得る必要があるが、定型約款を用いる不特定多数を相手方とする取引では、相手方の所在の把握が困難であったり、仮に所在の把握が可能であっても相手方の承諾を得るのに多大な時間やコストを要することがあるほか、一部の相手方に何らかの理由で変更を拒否された場合には、定型約款を利用する目的である契約内容の画一性を維持することができないということも問題として出てくる。このため、約款中に、この約款は当社の都合で変更することがある等の条項を設けておいて、この条項に基づいて変更を行うとの実務も見られるが、この条項が有効であるか否かについては見解が分かれているのが現状である。そこで、改正法案においては、定型約款準備者が相手方と合意することなく一方的に契約の内容を変更する定型約款の変更の制度を設け、その要件として、定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合するか、あるいは、変更が契約の目的に反せず、かつ変更に係る事情に照らして合理的な変更であることを要するということとしている。これにより、定型約款準備者としては、必要な定型約款の変更を安定的に行うことが可能になるとともに、定型取引の相手方、いわゆる顧客にとっても、定型約款の変更の効力を争う際の枠組みが明瞭になり、その意味で、その保護にも資することになると考えられる。[R192:12:14小川]
経済情勢や経営状況の変動によって約款を変更する必要が実際生ずる例としては、例えば、電気料金の値上げによる電気供給約款の変更や、クレジットカードに附帯されるポイント制度の改定に係る約款の変更などであり、これらは変更の必要性も十分あり得るところと考えている。[R192:13:10小川]
定型約款の変更をしないという当事者の個別の合意がある場合には、548条の4の規定は適用されない。[R192:15:20小川]
定型約款の変更の効力が生じないにもかかわらず変更前の債務を履行しないという場合には債務不履行責任が生じ得る。[R192:15:20小川]
改正法案においては、定型約款準備者が相手方と合意をすることなく一方的に契約の内容を変更する、いわゆる定型約款の変更の要件として、定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合するとき(第548条の4第1項1号)、それから、変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る事情に照らして合理的な変更であるとき(第548条の4第1項2号)であることを要するものとしている。[S193:13:16小川]
1号の相手方の一般の利益に適合するときというのは、特定の相手方の利益に適合することでは足りず、変更の内容が相手方全員の利益に適合する場合を意味するものである。この場合に相手方の合意がなくても一方的に契約の内容を変更することができるということとしたのは、要するに、相手方の一般の利益に適合するときであれば、通常、相手方が変更に合意すると言えるからである。この具体例としては、例えば、継続的に一定のサービスを有料で提供する契約において、顧客である相手方が支払義務を負う金額を減額する場合のほか、定型約款準備者が提供するサービスの内容を拡充するような場合が想定される。[S193:13:16小川]
変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る事情に照らして合理的な変更であるときを定型約款の変更の2つ目の要件としたのは、この場合には相手方の利益に適合するとは言えないものの、法令の変更や経済情勢、経営状況に変動があったときなどに、それに対応して定型約款を変更する必要性があるため、契約の目的に反しないことなどの厳格な要件のもとでこのような変更も許容すべきものと考えられるからである。変更に係る事情に照らして合理的な変更であるときという要件については、事業者側の事情のみならず、相手方の事情も含めて変更に係る事情を総合的に考慮しなければならないものであり、かつ、その判断は客観的に見て合理的でなければならず、事業者にとって合理的なものと言えればよいというわけではない。このように、定型約款の変更のルールは、事業者に有利に運用されるといったようなことを想定していない。[R192:12:13小川] [R192:13:10小川]
変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る事情に照らして合理的な変更であるとき、これを定型約款の変更の要件とした理由であるが、法令の変更や経済情勢、経営状況に変動があったときなどに、それに対応して定型約款を変更する必要性があるため、契約の目的に反しないことなどの厳格な要件の下でこのような変更も許容すべきものと考えられるからである。
変更に係る事情に照らして合理的な変更であるときという要件については、変更に係る事情として、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容が例示されていることからも明らかなとおり、事業者側の事情のみならず、相手方の事情も含めて総合的に考慮した上で客観的に見て合理的であると言えなければならないという趣旨である。したがって、相手方の事情として、変更後の契約内容が顧客にどのような不利益をどの程度与えるのか、あるいはその軽減措置が図られているのか、軽減措置の効果がどのようなものであるのかといったことを考慮することは当然のことである。[R192:11:15小川] [R192:12:13小川] [S193:13:16小川]
「その他の変更に係る事情」は、相手方の事情、準備者だけではなくて、相手方、要するに顧客側の事情も含めて解釈する。典型例は、解除事由があるかどうか、あるいは一定の不利益があるかどうか、こういった点が考慮要素となる。もっとも、変更内容が軽微である場合など、相手方に解除権を付与しなくても変更が合理的と言える場合もある。[R192:15:4金田] [R192:15:4小川]
「その他の変更に係る事情」に照らして合理的な変更であるという要件は、当然のことながら、事業者側の事情だけではなくて、相手方、顧客側の事情も含めて変更に係る事情を総合的に考慮しなければならない。しかも、その判断は客観的に見て合理的でなければならず、単に事業者にとって合理的なものと言えればよいというわけではない。要するに、事業者にとって必要性があればそれでいいという性質のものでは全くない。このように、定型約款の変更のルールは、事業者に有利に運用されることを想定しているものではない。その点は十分周知を図る必要がある。[R192:13:10小川]
定型約款の変更を望まない取引当事者に契約を解除する権利が付与されていることは、その取引当事者が契約を離脱することを可能とし、その負担を軽減する効果を有するものであるため、定型約款の変更の可否を判断するに当たっては、変更を肯定する方向で考慮され得る変更に係る事情である。しかし、定型約款の変更を望まない取引当事者に契約を解除する権利が付与されていたとしても、解除によって過大な違約金を支払わなければならないこととされているなどの事情がある場合には、その権利が実質的には確保されているとは言えない。したがって、このような場合には、解除する権利が付与されていることを定型約款の変更を肯定する方向で考慮することはできないと考える。[R192:11:15小川]
定型約款の変更をするには、548条の4第1項各号に掲げた実体的な要件のほか、定型約款準備者は、定型約款を変更する旨と変更後の定型約款の内容や変更の効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならないこととされている。そして、548条の4第3項では、定型約款の変更が相手方一般の利益に適合する場合に当たらない場合において、効力発生時期が到来するまでにこの周知をしなかったときには、相手方保護の観点から変更の効力は生じないこととしている。 この周知であるが、周知というのは広く知らせることを意味するものである。相手方にインターネットを利用できない方が含まれている場合であっても、その方も他の者を介するなどして変更後の定型約款の内容などを知り得るので、直ちにインターネットの利用以外の方法によることまで必要となり、例えば書面などによる個別の通知が必要になるわけではないと考えられる。また、この定型約款の変更は契約の締結後に行われるものであるため、相手方の住所などが判明しないケースもあるが、そのようなケースにおいてはインターネットを利用した周知は安価で効果的なものとして評価をすることも可能である。 もっとも、定型約款の変更には多様なものが含まれ得るところから、インターネットを利用した周知では足りないケースもあるものと考えられる。例えば、顧客の不利益を軽減する措置がとられており、その措置があるからこそ定型約款の変更が合理的であると言うことができるといったケースにおいては、顧客の年齢層などの属性などにもよるところではあるが、各顧客に個別に書面で通知をし、軽減措置を実行する機会を与えなければならないこともあり得るものと解される。[S193:13:16-17小川]
定型約款の変更における条項の相当性は、不当条項規制よりも厳格な要件のもとで判断される。したがって、定型約款の変更については、内容の不当性も含めて、548条の4第1項の要件で判断すれば足りるので、あえて548条の2第2項の規定を適用する必要がないというのが両者の関係である。いわば両者の要件を比較した上で適用関係を定めたにすぎない条文である。[R192:12:13小川]

以上で、国会審議における立案担当者の答弁の紹介を終わる。基本的には私見を交えず、できるだけ客観的に描写することを心がけたが、元の答弁内容については必ず原典に当たっていただくようお願いする。
(終わり)

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