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10/29/2020

Business Law Journal 2020年12月号特集 民法(債権法)改正後の実務フォローアップ

標題特集について、あれこれ呟いていたら、@dtk 氏からブログでまとめることを勧められたので、少しまとめてみることにします。

まず、弁護士による売買についての青山・岡成論文と保証についての有吉論文とは、債権法改正について、事前の対応策についての、現時点での「答え合わせ」という本特集の趣旨からは、期待外れでした。施行前の論点チェックとあまり変わっていないように感じます。

例えば、青山・岡成論文では「改正法の施行日より前に基本契約が締結されているケースでは、基本契約の変更を行う方法で改正対応を行うことがある。」(18頁)という記載がありますが、同じ特集の藤野忠弁護士と法務担当者とのクロストークでは、参加者が揃って、既存の契約の巻き直しはほとんどないと述べており、取引実務からずれた認識であることを端なくも示しているように思われます。

 

売買契約への影響という点では、瑕疵担保から契約不適合への改正に伴う契約規定の変更が重要であり、一定の分量が割かれていますが、例えば効果面については、従前の損害賠償と解除だけの規定が、追完請求、代金減額請求を排除するかどうかという点を検討しているにとどまります。しかし、従前の契約実務においては、取引類型によって、修補請求権を買主に与える特約(代替物引渡しについては、担保責任ではなく、品質保証規定でカバーしている例もありました)がある取引類型と、民法どおり損害賠償と解除のみ規定している例とがあり、これを民法改正に合わせてどのように修正していくか、という点にまで踏み込んで欲しかったところです。特に、従来ほとんど例のなかった、特定物売買において代替物引渡しが民法のデファクトルールでは認められるようになってしまったので、これをいかに消費者契約法他の強行法規に反しないように従前の実務を維持するのか(この点は新車販売の業界では法案成立前からかなり問題となっていました。)というような点にまで言及がなければ「実務フォローアップ」と称するのはどうかという気がします。

 

保証についての有吉論文は、民法の規定の解釈に留まり、実務においてどのような場面が問題となっているか、強行法規の多い改正部分を実務に反映させるための工夫などにはほとんど言及がなく、これでは学者の解説であって、実務家の書いた論文として読者が期待している内容ではないと感じました。(この点クロストークでは、身元保証とか、不動産賃貸借の保証について具体的言及がなされており、これぞ実務という印象がします。)

 

以上の2論文に比して、定形約款に関する松尾論文は、法改正後の利用規約、会員規約等薬100件の分析であり、特集の趣旨から参考になる内容と感じました。特に、対応状況の分析において、契約の成立要件の規定の新設をしている割合が低いというのは、薄々思っていたことがやはりそうなんだ、と実証的に確認できました。ただ、松尾論文が分析対象としているのは、参照が比較的容易な利用規約等を中心としているので、それ以外の定型約款の類型においても同じ傾向なのかは、知ってみたいと思いました。

定形約款が契約の内容になるためには、定形約款を契約の内容とする旨の合意をするか、予め定型約款を契約の内容とする旨の表示が必要だと民法に規定があるにもかかわらず、施行後も実務が変わったという印象はありません。例えば、宅配便を送るとき、ホテルで宿泊の申し込みをするとき、ゴルフ場に入場するときに、申込書に「当社所定の約款に従って取引いたします」というようなことを見た覚えがありません。民法の規定からは、組入要件を満たしておらず、契約として成立していないのではないかと思っているのですが、誰も気にしている様子もないことが気になっていたのです。これが今後の紛争や訴訟につながるのか、あるいは、組入についての実務が変わっていくのかは、もう少し様子を見ていく必要があると思いました。

 

システム開発モデル契約についての大谷論文は、本来モデル契約の全文の新旧対照表が横にあって参照しながら読めばもう少しよくわかるのに、と思いました。

 

クロストークは、すでに触れているように、対応状況について、藤野さんがうまく参加者から引き出しており、BLJの面目躍如と思いました。売買や保証についての論文は、まずクロストークを読んでから書いていただければ、もっと違ったものになったと思われます。惜しむらくは、参加者の業種をもっとバリエーションを持った人を加えれば、分析もさらに深みを増したのではないかというところと、債権譲渡という今回改正の大きな論点についての言及がなかったことでしょうか。債権譲渡禁止特約の効力を限定的とし、中小企業金融に資するという改正趣旨が、果たして立法者の思惑どおりとなっているのか、BLJらしい切り込みを見てみたかったところです。

 

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