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04/11/2013

法律事務所の海外拠点

大手法律事務所の海外拠点進出が相次いでいます。

東南アジア・中国案件のため直接海外の法律事務所とのつながりがない顧客にとっては便利になったのですが、にわか海外進出を図っている日本企業にとって、彼らの存在意義はどこになるのでしょうか。
思い切ったダンピングや指し値もできる中小事務所に比べると、大手は基本タイムチャージで値引きにはなかなか応じてくれません。その代わり、優秀な弁護士さんを多数揃え、人海戦術で行うべきデューディリジェンスに対応できますし、新規立法の際はその事務所の弁護士が立案担当者として官庁に出向していることが多く、立法趣旨をいち早く入手することができるといったメリットがあります。
しかし、東南アジア・中国案件の場合、日本の大手事務所の弁護士さんといえども「アウェイ」であり、情報の正確さでいうとローカルの優秀な弁護士には及びませんし、古くから進出しているブティック型中小事務所の(特に中国に多い)海外拠点との差別化ができないのではないかという懸念があります。日頃から日本の大手事務所と取引がそれなりにあればなじみで頼むということはあっても、そうでないクライアントにとっては、どこまで魅力的に映るのでしょうか。
また、本国からのパートナーを複数送り、それなりの規模で展開する欧米のローファームに比べると、日本の大手法律事務所の海外拠点はパートナーも含めて数名という体制がほとんどであり、物理的にも規制上も拠点でできる法律事務には限界があり、現地の法律事務所との連携が不可欠となります。そのため、短期的に大量の依頼を引き受けてしまうと、彼らでは対処できず、提携している現地の法律事務所に丸投げしてしまうか、東京または大阪の本部で作業のほとんどを行い、当該国のレギュレーションなど、現地の法律事務所に依頼するところのつなぎに徹するといった方法を採らざるをえません。ところが、前者の方法はクライアントから見れば日本の大手事務所を介在させる意義は見いだし難く、複数案件を依頼し現地の法律事務所とのリレーションができてくると、日本の事務所を飛ばして直接依頼に切り替えることも検討せざるをえません(パートナーにとっては打撃でしょうが、パートナーはさらに新興国へマーケット拡大で忙しく、アソシエイトが一人で案件を抱えているような場合、敢えて飛ばしを示唆することも考えられます)。結局、後者の道を究めていくべきだと思うのですが、それにしても、日本のクライアントが何を気にしているのかを社内事情まで通じたうえでニーズをくみ取り、それを現地の弁護士に分かる形で翻案し、現地から出てきたアウトプットを日本のクライアントが満足できる水準にするために必要な修正指示を行うといった、極めて高度な能力が要求されます。そうでなければ、新興国にもそれなりの規模の拠点を設け、金太郎飴よろしく自らの流儀を押しつける欧米の事務所にクライアントはなびいてしまう可能性もあります。
どうも東南アジアだ、中国だと拠点を作っている状況が、端から見ても大丈夫なのかと思ったので、ちょっと厳しめのことを書いてみました。

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Comments

同感です。日本人or日本語に長けた人材を若いうちから現地化して訴訟もできる当該国弁護士を育てるつもりならありかもしれませんけどね。

いっそのこと現地事務所をM&Aするとかそういうことは考えないのかな、とか思ったりします。ご指摘のとおり、語弊はありますが、中途半端な感じが否めないように思うので。橋渡し(あとはせいぜいセカンドオピニオンですかね?)に徹するのはひとつのあり方ですが、それで人材が確保しつづけられるのだろうかというところも気になります。

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