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08/21/2025

経営法友会月例会:民訴法改正の重要ポイント

圓道先生が毎年経営法友会で行っている民事訴訟セミナーに参加してきました。圓道先生がツイートされているように、民訴法改正の重要ポイントが今回の目玉です。ちょうど校了したばかりの「赤い本」第4版の内容を踏まえて法務担当者に対する影響を重点的にお話いただきました。

そこで、企業内法務に対する影響として気になった点をいくつかこちらでも記録しておきます。理解が正確ではないかもしれないという点については、あらかじめお断りしておきます。各人できちんと確認をおねがいします。

会社関係者のウェブ弁論期日への参加形態について

企業を当事者とする訴訟の場合、法務担当者を含めた会社関係者が訴訟期日に参加することがあります。弁論期日の場合は、法廷(いわゆるバーの内側)は、当事者とその代理人しか入れませんから、代理権を授与されていない[1]会社関係者は傍聴席で傍聴することになります。これに対して和解期日や弁論準備期日の場合、法廷(バー)という区画が特に設定されていないので、裁判長の許可のもと会社関係者が同席することがあります。すでに施行済みの民訴法改正で、弁論準備期日がウェブ上で行われる場合、同様に、会社関係者が代理人の法律事務所の会議室に赴き、同席している例があります。

ところが弁論期日もウェブ化されると、ウェブ参加している法律事務所の会議室は、法廷内とみなされるので、和解期日や弁論準備期日と同様に、会社関係者が参加するというのは、許されないことになるようです。ウェブ形式で行われる弁論期日の場合、裁判官は法廷からTeamsで代理人とつなぎ、オンラインで弁論手続を行い、代理人はウェブ参加するものの、代理権のない会社関係者は別途法廷の傍聴席から傍聴するという形になるようです。

改正法施行後の実際の弁論期日の運用がそこまで厳格になるのかはわかりませんが、リアルの期日のコロラリーとしては、今のところそうならざるを得ないと考えておいた方がよいようです。弁論期日はほとんどの場合儀式のようなものなので、会社関係者の傍聴はせずに代理人に任せるということもあるのではないかと思います。

 

訴状の送達について

訴訟代理人(弁護士・司法書士)はインターネットによる送達が原則であり、裁判所書記官が訴状をアップロードしたうえで、代理人(またはシステム使用の届出を行った当事者本人)がシステム閲覧をすれば、送達の効力が発生します。(閲覧をしない場合は、届け出られたメールアドレスに通知後1週間経過で送達の効力が発生)(改正法109条の3

提訴時には、被告代理人への訴訟委任はありませんが、提訴時の入力フォームには被告代理人を記載する項目があるそうです。これは、提訴前から弁護士間で協議が行われているとか、訴訟提起前に同一の案件で調停が提起され、不成立となった後に提訴されるとかのように、被告代理人に就任する蓋然性の高い弁護士が特定されている場合に入力できるようになっているようです。また、あらかじめ当事者は、代理人が誰になるかに拘らず汎用的な送達のメールアドレスを届け出ることができ、その場合は、裁判所からそのメールアドレス宛に訴状が送達されている旨の通知がくるとのことでした。

被告代理人予定者も未定、被告本人の届出メールアドレスもない場合は、原告代理人においてシステムからダウンロードした訴状等のプリントアウトした書面を裁判所に送り、裁判所から従来どおり特別送達で訴状が送達されるとのことでした。

企業法務の場合、債権回収など特定の場合を除くと、被告になる局面の方が多いと思います。そうすると、いきなり書留で訴状が送達されても、代表取締役あてなので秘書部に行ったり、訴状の中身を見て事業部門に行ったりと社内をうろうろして、法務部門にまで届くのが遅れるということがままあります。これが電子化されて、弁護士事務所にメールが行った場合に、きちんと迅速に担当部門に届くのか(法務部門が訴訟を担当する場合には法務部門、その逆に、訴状は担当事業部門に送達されるという整理をしていた場合に事業部門)、ロジ周りを整理しておく必要がありそうです。

また、事前交渉はA弁護士に依頼していたが、訴訟になったら別のB弁護士に委任したい思っていたような場合で、A法律事務所に通知が届いた場合に、結構気まずいことにならないかという点も、今後考える必要がありそうです。

 

[1] 弁護士登録をしている企業内法務担当者であっても、会社から訴訟委任はされていないことが多いと認識しています。

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